【解決志向アプローチ】問題があるときは、例外を探して、増やす、広げる

学生時代にアルバイト先の先輩から、

「教員になるの? 教員は『人のできていないところを見つけて指導する仕事』だから大変だね」と言われたことがあります。

その後、しばらくモヤモヤしていましたが…。

「先輩、それだけじゃないんですよ」と、このコラムで返事ができそうです。

内容が理解しやすいように、理論的背景を省略しています。
詳しく学びたい方は、最後に紹介している書籍を参照願います。

このコラムは約3分で読めます。

目次

1 よくトイレに貼ってあるコレ

この写真でクエスチョン(質問)です

「いつもきれいにお使いいただき、ありがとうございます」
というメッセージが、
好まれている理由は何でしょうか?

・・・

「肯定的なメッセージだから…」(確かに)

「感謝を言われて、嫌な気持ちになる人は少ないから…」(なるほど)

答えは、たくさんありそうですが、

今回注目したいのは、

「例外」に注目しているから

説明します。

まず、前提として、多くのトイレで問題が発生しています

問題がなければ、掲示物を貼る必要がないので・・・。

具体的には、トイレを汚す、壊す、が多いと思います。

だから、本当は「トイレを汚さないでください」「備品を壊さないでください」と伝えたいはずです

でも、この掲示は「いつもきれいにお使いいただき、ありがとうございます」と、

問題が起きていないときつまり「例外」に注目しています。

図にすると

そして、

  • いつも上手くやってくれていますよね
  • それを知っていますよ
  • お陰で助かっていますので、ぜひ続けてほしいです(ここまでは言ってないか・・・?)

という間接的なメッセージを送っているのです。

だから、あまり嫌な感じがせず、好まれているのだと思います

もし嫌な気持ちになるなら、行動する前から「ありがとうございます」と言われているから・・・

2 解決志向アプローチ

「問題」より「例外」に注目する心理療法があります。

それが、解決志向ブリーフセラピー です。

この心理療法の考え方は、教育、福祉、産業などで活用されているので、解決志向アプローチ とも呼ばれます。

今回は、解決志向アプローチの「例外」について、話を深めていきます。

「例外」とは

解決志向アプローチで最も重要な概念です。

「例外」を説明すると、

たまたま上手くいったとき

問題が起こらなかったとき

ちょっとましだったとき

「ちょっとましだったとき」があるので、通常の「例外」の意味より、広い範囲をとらえていると思います。

解決志向アプローチでは、

  • 「問題」を減らすより、「例外」を増やす
  • 「問題」を分析するより、「例外」を分析する
  • 「問題」について話し合うより、「例外」について話し合う

を重視しています。

「例外」を探し出す

「問題」に注目しているとき、「例外」は見つかりません

例えば、
とても苦労されている担任の先生が、ある児童生徒について、

いつも言うことを聞かないんです」

ずっと席を立って、歩き回っています」と言うことがあります。

毎日、毎時間、その悪い状態が起こり続けているように感じます

ところが、

「素直に活動しているときは、1回もないですか?」

「椅子に座っている時間は、1分もないですか?」 と質問すると、

担任の先生は、「そういうときもあります」「ゼロではありません」と返答します。

なぜなら、

ずっと悪い状態の人は、いないから
「例外」は、必ずある

質問されなければ考えない探さなければ見つからない のです。

「例外」が増えたら

「例外」が増えたら、「問題が起こらないで上手くいっている状態」が増えます

たくさん増えると、

「例外」が日常となり、もう「例外」とは呼べないかもしれません

そして、「問題」の姿はあまり見えなくなっていると思います

1日は24時間で、固定されているので、

「例外」が増えたら自然と「問題」の姿は減っていきます

3 「例外」を増やす方法

(1)「例外」をほめる、認める

例えば、
ある児童生徒が、ゲームばかりしている(学校に登校できていない)とします。

このような状況で多くの場合は、

ゲーム依存かも」(課題に名前をつける)

ゲーム時間を減らす必要がある」(課題を減らそうする)

と考え、

ゲームは1日3時間までにしましょう!

夜10時以降はゲーム禁止ね!」 と教育します。

これは先ほどの「トイレを汚さないでください」「備品を壊さないでください」と同じ視点です。

あるあるの「普通」の対応です。

多くの方がご存じのとおり、ゲーム時間を減らすのは、簡単ではありません

加えて、このような「課題」を指摘する方法は、

本人が自信を失ったり親子関係が悪くなったりと、別の問題を誘発することがあります。

このようなときは、「例外」をほめる、認める声かけが効果的です

例えば、

家族で一緒に食事できて、嬉しいよ

友だちと楽しそうに話している声を聞くと、こっちも嬉しくなるよ

おこづかいの範囲内で、うまくやりくりしているね

毎日、お風呂に入っているね

先ほどの「いつもきれいにお使いいただき、ありがとうございます」と同じ視点です。

ほめたり、認めたりすることによって、その行動は増えて、広がります

例えば、

  • 食事時間を中心に、親子の会話が増える。本人の気持ちを聞く時間が増える。
  • 今後も友だち関係を大切にする。ゲーム以外の人間関係が継続する。
  • 範囲内でやりくりすること(セルフ・コントロール)を意識する。
  • 清潔を維持する。生活リズムを守る。

などが見られるかもしれません。

結果的に、

ゲーム時間が減るかもしれないし、

ゲームが大好きな元気な子 になるかもしれません。

そうなったときには、ゲームが「小さな課題」に変化しています

(2)一度でもうまくいったなら、またそれをする

解決志向アプローチを含めたブリーフセラピーの中心哲学(グランド・ルール)をご紹介します。

ルール1 うまくいっているなら、変えようとしない 

ルール2 一度でもうまくいったなら、またそれをする

ルール3 うまくいかないなら、何か違うことをする 

ルール1
うまくいっているなら
変えようとしない

ルール2
一度でもうまくいったなら
またそれをする

ルール3
うまくいかないなら
何か違うことをする

「例外」に関係するのは ルール2 です。

ルール2を実施するためには、まずは「例外」が起きた理由について検討します

例えば、先ほどのゲームの例だと、

(ゲームをしないで)リビングで一緒に過ごしているときがあったのは、どうしてだろう?

このように考えます。

答えは、仮説で構いません

でも、「たまたまで、理由は無い」はNGです。

「こちらに何かしらの理由がある」と考えることが大切です。

例えば、

家族がテレビを観て笑っているときは、リビングにいることが多いかも

金曜日の夕方は、本人の機嫌がイイかも

父親が趣味の釣りの準備をしているときは、様子を見ていることがある

ここで、ルール2「一度でもうまくいったなら、またそれをする」の出番です。

上記に合わせて、

みんなで笑えるテレビ番組を観るようにしよう

金曜日の夕方の時間を大切にして、夕飯は本人が好きなメニューにしてみよう

お父さんと協力して、一緒に釣りに行けるように、本人を誘ってもらおう

実施しやすい内容です

本人が(ゲームをしないで)リビングで過ごす時間が増えたら

「例外」が増加して、大成功!

上手くいかなかったら、また別のことをやったらいいのです(ちなみに、これはルール3)。

家族に起きた小さな変化は、大きな変化を生み出します

まとめ

  • 「問題」より「例外」に注目することで、解決をつくりだす方法がある
  • 「例外」とは、たまたま上手くいったとき、問題が起こらなかったとき、ちょっとましだったとき
  • 「例外」を増やすことで、日常が変化し、「問題」の姿は見えなくなっていく
  • 「例外」を増やす方法は、「例外」をほめる、「例外」が起きたときの対応を再度行う

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<森・黒沢のワークショップで学ぶ>解決志向ブリーフセラピー ほんの森出版 森俊夫・黒沢幸子
ワークシートでブリーフセラピー 学校ですぐ使える解決志向&外在化の発想と技法 黒沢幸子

最後まで読んでいただき、ありがとうございました!

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