学校現場が頭を痛めている「保護者連携」について、シリーズでお伝えします。
初回は、基本となる考え方を整理し、対応時のポイントをリストアップします。
セルフチェックの材料として、ご活用していただけたら幸いです。
このコラムを読むと、保護者から「感じのよい先生」と思ってもらえるようになります。
内容が理解しやすいように、理論的背景を省略しています。
詳しく学びたい方は、最後に紹介している書籍を参照願います。
このコラムは約3分で読めます。
1 保護者との信頼関係に必要なもの
児童生徒の成長を支えるためには、手間暇をかける必要があります。
決して簡単なことではありません。
その過程には、
周りの大人にとって、見たくないもの、考えたくないものがあります。
例えば
- 児童生徒が自分を傷つけている
- 児童生徒が保護者に対して強い不満をもっている
- 児童生徒が学校に行きたくないと言っている
そのようなネガティブな事象の解決に向けて、
信じ合い、頼り合って取り組める関係が、保護者と学校の信頼関係です。
どうやったら、このような信頼関係を築くことができるのか?
答えは、とてもシンプルです。
「学校から大切にされている」
という感覚
ネガティブな事象が起きていても、
保護者が学校を信頼している場合は、次のような声が聞こえます。
例1 「先生は、よく話を聴いてくれる」
例2 「学校は、できることを対応してくれた」
例3 「担当の先生は、色々と配慮してくれる」
例4 「学級担任の先生は、何度も家庭訪問してくれる」
これが「大切にされている」という感覚です。
この感覚があるとき、たとえ問題が解決していなくても、保護者は学校を責めず、
落ち着いた状況で、解決のために何ができるかを考えます。
2 保護者に寄り添う「考え方」
次の3つのように考えると、保護者の立場を尊重したかかわりが自然と増え、
保護者の「学校から大切にされている」という感覚につながります。
(1)児童生徒を一番よく知っているのは保護者
学校の特徴として、
児童生徒から、保護者がまだ知らないことを聞いたり、
児童生徒には、学校でしか見せない姿があったりします。
そのため、先生には、保護者に教えるような口調で話してしまう危険があります。
保護者にとっては、上から言われているような不快感です。
重要なのは、
保護者から教えてもらう姿勢
保護者から話を聴くときには、
保護者の価値観や教育方針の理解に努め、
保護者の「うちの子は・・・」という発言を否定しない姿勢が大切です。
児童生徒のことを一番心配しているのは誰か?
ここまで育ててきたのは誰か?
卒業した後も一緒に生きていくのは誰か?
このような内容を自分自身に問いかけることによって、保護者を尊重する気持ちを確認できます。
(2)様々な家庭があり、保護者にも事情がある
学校が「難しい保護者」と思うとき、
その保護者自身にゆとりが無い場合が、少なくありません。
つまり
「困った保護者」ではなく
「困っている保護者」
ゆとりの無さは、次のような状態として表れています。
- ひとり親世帯の相対的貧困率は44.5%(厚生労働省,2021)
- 家族の世話をしている中学生は17人に1人(三菱UFJリサーチ&コンサルティング,2020)
- 児童相談所への相談件数は10年前の3倍(こども家庭庁,2022)
これらは、児童生徒の苦しさであり、保護者の苦しさでもあります。
調査が実施されている課題以外にも、
家族関係の悩み、保護者自身の健康問題など、家庭には様々な事情があります。
子育てに集中できない状況であることは、少なくありません。
保護者と接するときには、保護者にも何か事情があるかもしれないと想像し、
「一緒に」のスタンスで取り組むことが重要です。
(3)保護者にとって、学校内のことを知るのは難しい
学校内での「当然」を、保護者にとっても「当然」と思って、十分に説明せずにいると、
学校に対する誤解や不信感が生まれることがあります。
分かりやすい例が、いじめの定義です。
保護者にとって、いじめの定義を理解することは容易ではありません。
学校の先生方も、改定後の定義を理解するのに、かなりの時間と労力が必要だったのでは・・・。
生徒指導提要には、次のように記載されています。
学校の生徒指導基本方針等について、保護者と学校との間で共通理解を持つために、学校の教育目標や校則、望まれる態度や行動、諸課題への対応方針等について、保護者に周知し、合意形成を図ることが求められます。
生徒指導提要 第3章チーム学校における生徒指導体制
いじめの定義に限らず、
実際に、いじめの事案が起きたときは、確認できた事実を丁寧に説明する必要があります。
重要なのは、
直接会って、時間を掛けて、丁寧に説明する
この対応が、保護者の不安を軽減し、信頼関係の構築につながります。
例えば、
大きな買い物をするとき(自動車、保険など)や
医療機関で検査や治療を受けるときに、
担当者からの説明を聞いて、安心することがあると思います。
また、説明のわかりやすさから、
「この人に任せたら、上手くいくんじゃないか」と思うこともあるかもしれません。
丁寧に説明する対応は、安心感と信頼感につながります。
3 保護者に寄り添う「対応のポイント」
以下のように対応することが、「あなたを大切に思っている」というメッセージになります。
(1)保護者からの話の聴き方
前提として、保護者は学校の先生と会う前、
「わかってもらえないんじゃないか」と、不安になっていることが多いようです。
(1)ー1 児童生徒の良さを伝える
このポイントの順番が、1つ目である理由があります。
保護者から学校の対応を批判された場合、
後から児童生徒の良さを言うと、わざとらしく不自然な印象になるからです。
また、児童生徒の良さを伝えると、そのあとの先生からの発言に対して、
保護者から注目してもらえる効果もあります。
(1)-2 聴いた内容を確認する
保護者の言葉を繰り返し、聴いた内容を伝え返して、理解を確認します。
これが保護者にとっての「聴いてもらった」「伝わった」という手応えになります。
また、保護者の困り感や意向を確認することは、
校内で情報共有し、適切に対応するためにも重要です。
(1)-3 共感とねぎらい
上記(1)ー2 に加えて、感情に関する言葉を伝えることで、共感に近づくことができます。
あー、それは本当に心配ですね
嬉しいですね!
これが保護者にとっての「わかってもらえた」という感覚につながります。
そして、保護者の苦労、努力について労いの言葉を添えます。
それは大変ですね・・・お疲れ様です
よく対応されていますね
がんばっていることを認めてほしいのは、保護者も一緒です。
丁寧に話を聴く、ねぎらう = あなたを大切に思っている
丁寧に話を聴く、ねぎらう
= あなたを大切に思っている
(2)保護者と電話するときは
電話は音声のみであるため、マナーの有無が目立ちやすいものです。
(2)-1 マナーとしての言葉
相手の時間に配慮した言葉
「〇〇についてお話をしたのですが、〇〇分ほどお時間をいただいてよろしいでしょうか。」
相手や身内の呼び方
「〇〇さんのお父様ですね。いつもお世話になっております。」
クッション言葉
「おそれいりますが」
「お手数おかけしますが」
「お忙しいところ申し訳ありませんが」
マナーのない対応をされると、馬鹿にされているように感じる場合があります。
(2)-2 笑顔で落ち着いた口調
理想は「笑声(えごえ)」です。
笑声とは、笑顔で話していることが伝わるような声です。
笑顔は、良好なコミュニケーションの基礎なので、印象の良さに直結します。
ただし、ネガティブな内容を笑顔で聴くのは失礼なので、
電話の内容に合わせて、声質や口調は調整することは必要です。
(2)-3 事務的ではないあいづち
あいづちは「うん」を使用せず、「はい」が基本となります。
心を込めながら「うん」を繰り返す先生がいますが、残念ながら、あまり感じが良いものではありません。
また、「はい」としか言わないと、事務的で冷たい印象を与えます。
内容に合わせて、多様なあいづちを打つことが重要です。
慣れていない方は「そうですか」「なるほど」「そうですね」「確かに」などの言葉を
1〜2個だけ意識して入れてみると、印象が大きく変わると思います。
礼儀とあたたかさ = あなたを大切に思っている
礼儀とあたたかさ
= あなたを大切に思っている
(3)保護者から来校していただくときは
前提として、来校時、保護者は不安、緊張、不信感等を抱いていることが多いようです。
(3)-1 準備のポイント
- 他の児童生徒から見られず、入室できる時間に配慮する
- 話しやすい部屋を用意する
- 玄関にスリッパを並べておく
- 夕方以降は、玄関・廊下の照明をつけておく
(3)-2 迎えるときのポイント
- 玄関で出迎え、挨拶と自己紹介をして、部屋に案内する
- 面談前のお手洗いの利用を確認する
- 入室したら、席を案内し、荷物の置き場所も伝える
- お茶を出す
- 来校への感謝を伝え、再度の自己紹介をする
- 面談にいただける時間を伺い、終了予定時間を決める
(3)-3 終了時のポイント
- 玄関まで見送り、感謝を伝える
(3)-4 学校の先生ならではのポイント
- 翌日、児童生徒に保護者の印象をポジティブに伝える
(保護者に伝わることを前提とした内容です)
客人として扱う = あなたを大切に思っている
客人として扱う
= あなたを大切に思っている
まとめ
- 保護者と信頼関係を築くためには、「学校から大切にされている」という感覚が重要
- それは、学校の先生が「大切に思っている」と言っても、得られるものではない
- 学校の先生の在り方や、具体的な行動の積み重ねによって、得られるものである
- 次回は、トラブル予防(保護者の怒りについて)です
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最後まで読んでいただき、ありがとうございました!