セルフ・コンパッションの3回目となります。
前回を読みたい方はこちら
↓ ↓ ↓
さて、チャットGPTに「日本の教員で、休職者が増加している原因は?」と質問したら、
『過重な業務負担』『精神的ストレス』『教育環境の変化』『管理職の負担』『社会的な期待とプレッシャー』『休暇の取りづらさ』と回答がありました。
すべてに「正解!」って言いたくなります。それほど、学校の先生はハードな仕事です。
このコラムを読んで、先生ご自身のケアに取り組んでいただけたらと思います。
内容が理解しやすいように、理論的背景を省略しています。
詳しく学びたい方は、最後に紹介している書籍を参照願います。
このコラムは約3分で読めます。
1 3つの感情システム
感情がどのように役立っているかという視点で、
機能として3つに分類したものが、3サークルモデル(Three Circles Model)です。
図にすると、次のようになります。
怒り、不安、嫌悪の感情
自分の周囲にある脅威を見つけて、身を守る機能があります。
例えば
- 児童生徒の学力が思うように向上しないとき
- 児童生徒同士のケンカがあり、対応するとき
- 他者から批判されたり、自己否定しているとき
興奮、喜び、達成感の感情
目標や仕事に対して活動する機能
例えば
- 授業や他の業務に集中しているとき
- 学校外でも、仕事のことを考えているとき
- 自分の勉強や習い事、運動をしているとき
満足、安心、充足の感情
気持ちを落ち着かせて、休息や回復を図る機能
例えば
- 職員室で、手を止めて、コーヒーや紅茶を飲んでいるとき
- 安心できる人とコミュニケーションをしているとき
- ゆっくりとお風呂に入ったり、のんびりと音楽を聴いているとき
3つのシステムすべてが重要な機能を果たしています。
2 3つの円(サークル)の大きさ
あなたのシステムの割合は?
あなたの生活で、頻繁にスイッチがオンになるシステムは、どれでしょうか?
よくオンになるシステムを大きく、あまりオンにならないシステムを小さくすると、
それぞれがどのくらいの大きさになるか、イメージしてみましょう。
どれかが大きくなれば、どれかが小さくなり、合計面積は変わりません。
例1 脅威システム(レッド)が大きい
脅威システム(レッド)が大きく、他のシステムが小さい場合は、
ずっとアラーム(警報)が鳴り続いている状態なので、とても疲弊していることと思います。
上手く対処することで一時的な安心は得られますが、ストレスが大きい状態です。
脅威システム(レッド)を小さくするためには、スージング・システム(グリーン)を大きくすることが有効です。
例2 スージング・システム(グリーン)が小さい
スージング・システム(グリーン)が小さい場合は、
2つのタイプが予想されます。
<タイプ1>
仕事をがんばっているから(動因)、その分、怒りや不安などが高まっている(脅威)
<タイプ2>
過去のつらい経験から、スージング・システムが十分に活用できない
学校の先生は業務が多いため、<タイプ1> が多いのではないかと予想します。
バーンアウトを予防するためにも、スージング・システム(グリーン)を大きくすることが重要です。
大切なことは、3つの感情システムのバランスをとること
3 スージング・システム(グリーン)を大きくするために
3つの方法をご紹介します
(1)自分の落ち着く(スージング)時間を増やす
あなたにとって、落ち着きが感じられるのは、どのような時間でしょうか?
例えば、プライベートでは
好きな音楽を聴く
散歩する
料理をつくる
ストレッチをする
ビールを飲む
お風呂にゆっくりと入る
スイーツを食べる
友だちと会う
キャンプする
クッションを抱く
猫と遊ぶ など
例えば、職場では
お菓子を食べる
とっておきの紅茶を飲む
植物の成長を観察する
窓から遠くを見る
信頼できる先生と雑談する
写真(家族や旅行先)を見る
深呼吸する
嫌な思いをトイレで流す
少しのあいだ目をつぶる など
自分にとっての落ち着く(スージング)時間を、少しずつ増やしてみてください。
(2)スージング・リズム・ブリージング(ワーク)
呼吸のワークを紹介します。
ゆっくりとした呼吸で、副交感神経を高め、スージング・システムをオンにします。
<準備>
- 他者の視線を気にしなくてよい、静かな場所で実施してください。
<やり方>
- 床にしっかりと足の裏をつけます。
背筋を伸ばし、肩を少し後ろに引いて、胸をひらきます。
(座っている場合は)椅子の背もたれを使わないでください。
肩や顔から、力を抜きます。
目は、閉じるか、薄目にしてください。 - 呼吸にそっと注意を向け、息を吸い、吐く様子を観察します。
息を吸い、吐くときに、どんな感じがするでしょうか。
おなかの膨らみを感じることができるでしょうか。
呼吸以外のことを考えていることに気づいたら、やさしく呼吸へと注意を向け直します。 - 呼吸のリズムを、少しゆっくりにします。
頭の中で5つ数えながら、鼻から息を吸って
少し止めて
5つ数えながら、口から吐き出す
自分にとって心地よく、不自然ではないリズムです。
吐き出すときに、身体の力が抜けていく感じを味わいます。
呼吸以外のことを考えていることに気づいたら、やさしく呼吸へと注意を向け直します。 - さらにこのリズムで2~3分ほど呼吸を続けて、終了です。
(3)自分をねぎらう(セルフ・コンパッション)
あなたがどんなに大変で、どれだけストレスを抱えているか、
一番よく知っているのは、あなた自身です。
ぜひ、自分で自分に、ねぎらいの言葉をかけていただきたいと思います。
例えば
「よく頑張っているね」
「大変だよね」
「疲れるよね」
「本当がんばっているよね」
「いい先生だよ」
「十分にやっているよ」
「すべてが上手くいくわけがないよ」
「今は、これで十分だよ」
「合格点だよ」
「少し無理しているよね」
「がんばり過ぎかもね」
「少しゆっくりしたら?」 など
こんな言葉でも、いいかもしれません。
「いつも難しいことを考えている私の頭に」「お疲れ様です」
「ずっと動き続けてくれている私の身体に」「お疲れ様です」
「時々、疲れている私の心に」「お疲れ様です」
「そして、いつもありがとう」
3つの方法をご紹介しました。これらを組み合わせて実施するのもよいかもしれません。
まとめ
- どのように役立っているかという機能の視点で、感情を3つに分類したものが、感情システム(3サークルモデル)
- 大切なことは、3つの感情システムのバランスをとること
- スージング・システム(グリーン)を大きくすることで、脅威システム(レッド)は自然と制御される
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!