学校現場が頭を痛めている「保護者連携」について、シリーズでお伝えしています。
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第3回は、保護者とのトラブルを未然防止する方法について、ポイントを整理します。
さまざまな事案がありますので、あくまで、一般的な原則としてお読みください。
このコラムを読むと、同僚から「生徒指導の達人」と思ってもらえるようになります。
内容が理解しやすいように、理論的背景を省略しています。
詳しく学びたい方は、最後に紹介している書籍を参照願います。
このコラムは約3分で読めます。
1 信頼関係を築きたいなら、直接会って話をする
人が信頼するのは、「言葉より行動」です。
例えば
例1 入院中に、心配のメッセージだけでなく、お見舞いにきてくれる友人
例2 異なるサイズを求めると、「少々お待ちください」とバックヤードに走る店員さん
例3 いつも、私が作った料理を残さずに食べてくれる家族
行動には、説得力があります。
- 児童生徒のことを心配していたら、家庭訪問する。
- 児童生徒の活動を応援していたら、大会や練習を見にいく。
- 保護者の話をしっかりと聴きたいなら、面談の時間をつくる。
直接会うことは、それ自体にメッセージがあります。
行動には説得力があり
直接会うことは、それ自体にメッセージがある
行動には説得力があり
直接会うことは
それ自体にメッセージがある
きっと、「その時間がない」と思っている方が多いことと思います。
そうなんです。多くの人が、時間がないんです。
だから、あえて言わなくても、大切に思っている気持ちが伝わります。
2 保護者が不満を抱えていたら、まず、お詫びする
最初の対応は、保護者の気持ち
例えば、塗れた傘をぶつけられて、
「よそ見していました」と言われるのと、
「すみません。よそ見していました」と言われるのでは、受け手の気持ちが違います。
こちらが嫌な思いをしたのだから、まず、謝って欲しいと思うのは、自然な反応です。
そして、学校に困り感を訴えた保護者に対して、
前提として、想像しておきたいことがあります。
保護者が学校に何かを訴えたときは
我慢の限界を超えたときが多い
まず、保護者が気持ちを害したことに対して、お詫びしましょう。
ご不快な思いをおかけし、申し訳ありません
ご心配をおかけして、申し訳ありません
お詫びすることで、その後のコミュニケーションが円滑になることは多くあります。
何に対して謝っているのかを明確にする
次は、NG対応です。
「申し訳ありません」
何に対して謝っているのか不明確です。
「不手際でトラブルが起こってしまい、申し訳ありません」
不手際がトラブルの原因だと言っていますが、本当でしょうか?
適切な対応は、
ご不快な思いをさせてしまい、申し訳ありません
保護者が気持ちを害していることに対して、お詫びします。
事実関係を確認して、ご報告させていただきます
事実については、確認することを説明します。
3 保護者の話を聴くときは、聴くことに集中する
「話を聴く」=「傾聴の技術」 と想像される方が多いかもしれません。
しかし、ここでお伝えするのは、「話を聴く」=「NG発言をしない」です。
なぜなら、
「学校が話を聴いてくれない」と困っている保護者から、
うなずきが少ない、あいづちが下手 などの不満を聞いたことがありません。
つまり、
保護者の
「学校が話を聴いてくれない」は
「傾聴してくれない」ではない
保護者から語られるのは、
次のような学校のNG発言です。
NG1 保護者の発言が否定される
「本当に、本人がそう言っているんですか?」
疑われる
本人の気持ちを伝えているのに、「そんなことはないと思いますが」
調べもせず、ないと言われる
「それは無理です」
門前払いされる
検討も代案もなく、ポイントは、
「受け止める」と「受け容れる」を区別する
NG2 説明しても、軽い問題と扱われる
「学校ではよくあることですよ」
よくあることなら問題じゃないのか!?となる
「お母さんの心配し過ぎですよ」
相談しているのがおかしいみたいに言われてしまう
「お互い様なんですよ」
いいや、あっちの方が悪い!となる
ポイントは、
保護者の「気持ち」を受け止める
NG3 味方になってもらえない
「他の児童生徒が、困っています」
うちの子だけが悪いんですか!?となる
「お子さんが、もっと強くならないと」
こっちに課題があると言われる
「そこは保護者の責任で」
学校の先生って、冷たいんだな・・・となる
ポイントは、
帰り道の保護者の気持ちを想像する
4 保護者連携の土台は、児童生徒と先生の信頼関係
ここで「そもそも」の話を入れちゃいますが・・・
児童生徒と先生の間に信頼関係があったら、
保護者とトラブルになることや、「最悪な状態」になることは少ないと思います。
ほとんどのトラブルは、
保護者の前に、児童生徒が先生に不信感をもっています。
例えば
- 先生からの指導(学習指導、部活動など)で、児童生徒が傷ついている
- いじめ事案や不登校に対して、先生が寄り添った支援をしていない
- 児童生徒が、学校の対応(いじめ対応、生徒指導など)に納得していない
保護者とのトラブルの未然防止として、
やっぱり基本は
児童生徒と信頼関係を築く
日頃の児童生徒へのかかわりは、もちろんですが、
保護者から不信感をもたれたときも、児童生徒との信頼関係という原点に戻ることが重要です。
(各学校でさまざまな事情があることと思いますが)
校内のチーム対応を強化し、児童生徒と先生の信頼関係を再構築します。
例えば
- 改めて、児童生徒から話を聴いて、支援を充実させる
- 児童生徒が納得することを重視して、指導に当たる
- 学級担任に限定せず、他の教職員が前面に出て、支援に当たる
- スクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカー等が支援に加わる
5 学校ができること、できないことを整理する
このような整理は、多くの場合、
保護者からの要望を受けて、行われるものかもしれません。
そのため、整理することは、支援策の検討だけでなく、
「保護者への回答」の準備となります。
保護者への「できないこと」の説明には、
次のポイントがあります。
- 要望の背景にある保護者の気持ち(不安や焦りなど)に対して、共感的な理解を伝える
- 「こどもの安全や成長を願うことは一緒」という学校の立場を明確にする
- 「できないこと」について、法令等による根拠や妥当性(本人の安全が守れない等)を含めて説明する
- 「できない」で終わらず、「できる」の枠の中で工夫した対応案(代案)を出す
保護者の悩みで、多いものは、
「学校は『できない』の一点張りで、その理由を説明しないから、納得できない」です。
保護者からの不当な要求に対して、
学校が「できるわけがない!」と、やや感情的に受け止め、
上記ポイントのような対応が十分にされず、トラブルになる場合が多くあります。
不当な要求なのですから、
毎日精一杯のところで、児童生徒に向き合っている先生方が、
「そんなことができるわけない!」と怒りを感じるのも、自然なことです。
ただ、その怒りに飲み込まれてしまうと、解決に向けた対応が困難になります。
保護者の「やむにやまれぬ」「切羽詰まった」気持ちを想像して、
冷静に対応していただけたらと思います。
まとめ
- 保護者と直接会うことは、それ自体にメッセージがある
- 気持ちを害したことに対して、保護者にお詫びする
- 話を聴くときは聴くことに集中する(保護者の発言を否定しない、問題を軽く扱わない、保護者の味方になる)
- 児童生徒との信頼関係が、保護者と良い関係をつくるための基本
- 不当な要求であっても、冷静に配慮をもって回答する
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!
次回は、別のテーマでお会いしましょう。