2024年の小中高生の自殺者数は、529人の過去最多となりました(厚生労働省)。
どのような児童生徒が、自殺の危険に追い込まれているのか?
それを統計や調査研究で明らかにしたものが、「自殺の危険因子」です。
このコラムを読むと、「自殺の危険因子」の活用について理解することができます。
できるだけ配慮ある表現を心掛けますが、疲れている方は休みながら、少しずつ読んでください。
生きづらさを感じている方は、リンク先の相談窓口にアクセスしてみてください。
内容が理解しやすいように、理論的背景を省略しています。
詳しく学びたい方は、最後に紹介している書籍を参照願います。
このコラムは約3分で読めます。
1 はじめに
このコラムは、全3回のシリーズで、
高リスクの児童生徒を発見するために何ができるか を解説します。
第1回「自殺の危険因子」
おもに、児童生徒から希死念慮が語られる前のアセスメント
第2回「自殺リスクのアセスメント」
おもに、児童生徒から希死念慮が語られたときのアセスメント
第3回「自殺前のサイン」
児童生徒の危険を早い段階で察知するための知識、心構え
文部科学省「教師が知っておきたい子どもの自殺予防」には、次のように書いてあります。
いじめや自殺が起こると、マスコミは「なぜ発見できなかったのか」「どうして防げなかったのか」と教師の責任を追及します。しかし、「それ以上に、生徒の自殺の危険に早期の段階で気づいて、教師が適切な救いの手を差し伸べている場合が圧倒的に多い」と、ある精神科医も指摘しているように、実際には教師の誠実な態度が多くの子どもの自殺を防いでいるのです。
引用「第3章 自殺予防のための校内体制」
青マーカーは当Webサイトが引いたもの
自殺予防は、生きることの支援です。
それでは、第1回をはじめましょう。

2 自殺の危険因子
統計と調査研究によって整理された「自殺の危険因子」は、
自殺リスクという複雑なものを、わかりやすく理解するのに役立ちます。
文部科学省「教師が知っておきたい子どもの自殺予防」から引用すると、
このような因子を数多く認める子どもには潜在的に自殺の危険が高いと考える必要があるのです。
- 自殺未遂
- 心の病
- 安心感のもてない家庭環境
- 独特の性格傾向(極端な完全主義、二者択一思考、衝動性など)
- 喪失体験(離別、死別、失恋、病気、怪我、急激な学力低下、予想外の失敗など)
- 孤立感(とくに友だちとのあつれき、いじめなど)
- 安全や健康を守れない傾向(最近、事故や怪我を繰り返す)
引用「第2章 自殺のサインと対応」
「自殺の危険因子」には、長所と短所があります。
短所は、あくまで統計上の話であるため、
目の前にいる人の自殺リスクを評価するには、不十分ということです。
該当する因子が複数ではなく、たった1つでも、
その人にとって重要であれば、リスクは高くなります。
長所は、統計と調査研究によって明らかにした因子であるため、
中長期的な視点で、自殺リスクをアセスメントするときの評価項目になります。
統計上、自殺する人の多くは、複数の因子を抱えているため、
多くの因子に該当する児童生徒は、潜在的なリスクが高いと考えられます。
「自殺の危険因子」で
潜在的なリスクを評価する
(1)「自殺の危険因子」を活用した自殺予防
- 気になる児童生徒を、危険因子で確認する
例えば、いじめ被害や欠席の増加など、気になる児童生徒について、
危険因子に該当するか確認します。
「気になる児童生徒」 「高リスクの児童生徒」の変換です。 - 集団から、潜在的に高リスクな児童生徒を発見する
学年・学級の単位で、複数の因子に該当する児童生徒を確認します。
自殺予防にあまり詳しくない先生もいるため、
組織として高リスクの児童生徒を発見し、支援、観察等を強化します。
ポイントは、
SOSのサインが出る前から
「自殺の危険因子」でリスクを評価する
自殺した児童生徒の約半数は、自殺の原因・動機が「不詳」です。
つまり、悩みを抱えている様子を見せずに、亡くなっています。
そのため、SOSのサインが出る前から、潜在的な自殺リスクの評価をはじめることが重要です。

(2)厚生労働省の資料にある因子
文部科学省の資料には無かった危険因子を、
厚生労働省「ゲートキーパー養成研修用テキスト」(第3版)から挙げると、
- 自傷行為
- ソーシャルサポートの欠如(支援者がいない)
- 自殺企図手段への容易なアクセス
引用「4 自殺の危険因子と防御因子」
文部科学省の資料は、「自殺未遂」の説明で自傷行為に触れています
「ソーシャルサポートの欠如」は、支援者が不在である場合に加え、本人が支援を拒否している場合もあります。
助けを求めない、甘えない、弱音を吐かないは、潜在的に高リスクということです。
「独特の性格傾向」なども共通しますが、
学校に適応して、トラブルはなく、しっかりとしているように見える児童生徒が、
実は、こころの中では悩みを抱え、疲れ切っているという場合が、多くあります。
「自殺の危険因子」は、生きづらさであることが多く、
「しんどい?」「疲れている?」「抱えている?」と想像するヒントになります。
そして、「危険かもしれない」という教師の勘に、根拠を与えてくれます。
「自殺の危険因子」は、
想像を助け、教師の勘に根拠を与える

(3)文部科学省+厚生労働省 10項目
参照しやすいように、ここまでの危険因子を一覧にします。
自殺の危険因子(文部科学省+厚生労働省)
- 自殺未遂
- 心の病
- 安心感のもてない家庭環境
- 独特の性格傾向(極端な完全主義、二者択一思考、衝動性など)
- 喪失体験(離別、死別、失恋、病気、怪我、急激な学力低下、予想外の失敗など)
- 孤立感(とくに友だちとのあつれき、いじめなど)
- 安全や健康を守れない傾向(最近、事故や怪我を繰り返す)
- 自傷行為
- ソーシャルサポートの欠如(支援者がいない)
- 自殺企図手段への容易なアクセス
「自殺の危険因子」に関する数値
- 小中高生の2022〜2023年の分析では、過去に自殺未遂歴があった自殺者のうち、自殺未遂が1年以内であった場合が過半数を占めた。女子小学生や女子高校生は、過去の自殺未遂は1か月以内だった自殺者の割合が高い。(1)
- 2023年の自殺者21,837人のうち、原因・動機「病気の悩み・影響(うつ病)」は4,377人で、健康問題の中で最も多い。(2)
- 2001年の調査研究では、異性愛ではない男性は、異性愛の男性より、自殺未遂率が5.98倍。(3)
- メタ解析によると、10代に自傷経験があると、10年後の自殺による死亡率が400〜600倍高い。(4)
(4)Owens, D., Horrocks, J., & House, A. (2002). Fatal and non-fatal repetition of self-harm: Systematic review. British Journal of Psychiatry, 181, 193-199.

3 児童生徒の自殺の原因・動機
児童生徒の自殺の原因・動機は特定が難しく、約半数は特定されない状況にありますが、
特定されたなかで、比率が高いものを挙げると、自殺リスクを想像しやすくなります。
次は、警察庁「自殺統計」の平成21〜30年の10年間の累計を、厚生労働省が分析したデータです。
厚生労働省「令和元年度自殺対策白書」から、当Webサイトが比率が高い上位3項目をグラフ作成しました。
自殺の多くは多様かつ複合的な原因及び背景を有しており、様々な要因が連鎖する中で起きています
2024年の小中高生の自殺者(厚生労働省)は、初めて女子(290人)が男子(239人)を上回り、
特に、中学生・高校生の女子の増加が目立つ結果となっています。
小学生の特徴は「しつけ・叱責」や「親子関係の不和」など「家庭問題」の比率が高い
中学生の特徴は「家庭問題」に加えて、「学業不振」や「学友との不和」など「学校問題」が高い
高校生の特徴は、中学生と同様に「進路に関する悩み」や「学業不振」など「学校問題」の比率が高く
うつ病や統合失調症などの精神疾患に関する「健康問題」が、女子を中心に急増する

自殺のリスクを最も知っているのは、本人です。
本人からサインを出るまで、周りの人は想像することしかできません。
そう考えると、自殺予防のはじまりは、本人の苦しさ、生きづらさを、想像することなのかもしれません。
まとめ
- 「自殺の危険因子」を活用することで、潜在的な自殺リスクを中長期的な視点で評価できる
- SOSのサインが出る前から、リスクを評価することが重要である
- これらの因子は、「危険かもしれない」という教師の勘に、根拠を与えてくれる
- 「自殺の危険因子」や「自殺統計のデータ」は、児童生徒の「生きづらさ」を想像する助けになる
故人の家族や友人等のご協力があったことも、想像していただきたいと思います。
統計データや調査研究には、続き(第2回)はこちら
↓ ↓ ↓

最後まで読んでいただき、ありがとうございました!