「どうやったら、(児童生徒に)やる気を出させることができるだ!?」と、悩むことってありますよね。
『やる気の心理学』について、数回のシリーズでお伝えします。
学校の先生は、大学・大学院の教育心理学で学んだことと思いますが、時間が経てば忘れるのが自然・・・ということで、
やさしく解説!「やる気」を高める方法。1回目です。
内容が理解しやすいように、理論的背景を省略しています。
詳しく学びたい方は、最後に紹介している書籍を参照願います。
このコラムは約3分で読めます。
1 「やる気」とは
人が最も関心を寄せる 心理現象 の1つです。
学校現場でも「やる気が出ない」「やる気のある児童生徒」など、頻繁に使われる言葉であり、
ある意味、
児童生徒のやる気を高めることができる = 腕の良い先生
と言ってもいいぐらい、重要な概念です。
英語では、motivation(モチベーション)
学問的には、動機(どうき)づけ と言われています。
ちなみに、「動機づけ」の定義は、「行動が生起し、維持され、方向づけられるプロセス全般」
2 外発的動機づけと内発的動機づけ
動機づけ(やる気)は、大きく2つに分けられます。
外発的動機づけ
報酬や評価、罰といった、外からの刺激による動機づけ
例えば
例1 志望校に合格したいから、勉強する
例2 怒られないように、練習する
例3 親から褒めてもらえるから、手伝う
内発的動機づけ
興味がある、楽しいといった、内から湧き出る動機づけ
例えば
例1 数学がおもしろいから、勉強する
例2 上手になりたいから、練習する
例3 皿洗いが好きだから、手伝う
児童生徒だと、次のイメージです。
外発的動機づけってダメなの?
「アメ(報酬)とムチ(罰)」の外発的動機づけに対して、「好きこそものの上手なれ」の内発的動機づけです。
外発的動機づけは活動が「手段」となっており、内発的動機づけは活動が「目的」となっています。
これらの違いから、外発的動機づけは「悪いもの」と思われがちです。
しかし、それは誤解です。
例えば、将来、社会の中でどういった人間になりたいかという目標に沿って、
「手段」として学習することも、人が成長していく上で重要な要素です。
また、多くの社会人が、自分の仕事に興味や価値を感じつつ、それと同時に給与額を重視しています。
内発的動機づけのメリット
それでも内発的動機づけが重視される理由は、次の特徴にあります。
内発的動機づけは、やる気の「質」が高い
内発的動機づけは
やる気の「質」が高い
それは、熱中、没頭と言われるもので、
活動に対する集中と、持続的な取り組み、そしてポジティブな感情が得られている状態です。
活動そのものが目的で、主体的に考えるため、創造性やパフォーマンスの高さにも影響します。
真剣だから楽しい、楽しいから真剣という理想の循環に入り、児童生徒の表情が変わります。
3 内発的動機づけを高める方法
内発的動機づけには「興味」が必要です。
「これ、好き!」「おもしろい」「えっ、何これ?」「不思議!」「どうして?」「もっと知りたい」という心の動きです。
この「興味」を分解すると
興味 = 個人の好きな分野 + 好奇心の刺激
個人の好きな分野 + 好奇心の刺激
となります。
それぞれについて、説明します。
個人が好きな分野で活動する
バスケットボールが好き、アニメの沼にハマる、動画制作で夜更かし など
好きな分野は、人によって異なるものです。
人は、自分の好きな分野で活動すると、自ずと熱中し、時間を忘れて取り組みます。
内発的動機づけを高めるためには、
個人が好きな分野で活動する
当たり前のことを言っていますが、重要です。
中学校や高等学校では、進路先を選ぶときの1つの考え方となります。
実際、先ほどの例(バスケットボール、アニメ、動画制作)を学ぶため、
部活動の強豪校に進学したり、多様な授業が受けられる高等学校に進学したりする生徒は多くいます。
ただ、ほとんどの先生にとっては、
「その興味が、うちの学校にある教科であってくれたら・・・」と、悩ましいものだと思います。
そこで、次の「好奇心を刺激する」です。
好奇心を刺激する
人には、新奇な刺激や、未知の情報を求める傾向があります。
例えば
例1 ネットニュースの刺激的な見出し「〇〇の1位は?」「〇〇過ぎる」「〇〇が激白」
例2 職場の同僚から「ねー、聞いた?」と語られる、ここだけの話
「えっ、何?」とワクワクして、知りたくなります。
このワクワクが高まる理由は、
「自分が既に知っていること」と
「新しいモノ・情報」の間に
ズレがあるから
ズレがあると「なんだろう?」「もっと知りたい」と、ズレを解消したくなります。
それが好奇心の刺激となり、内発的動機づけが高まります。
ズレを上手く活用した例は
例1 習いごと(書道、ピアノなど)は、先生がお手本を見せ、生徒との違いを明確にする
→「えっ、自分と違う」「どうしたら?」となり、内発的動機づけが高まる
例2 書籍のタイトルは、「魔法の〇〇」「〇〇が9割」「〇〇の品格」など、強い言葉で言い切る
→「何だろう?」「どういうこと?」となり、内発的動機づけが高まる
例3 テレビ番組「チコちゃんに叱られる!」は、先に疑問と不思議な答えが提示される
→「どういうこと?」「詳しく知りたい」となり、内発的動機づけが高まる
実際、内発的動機づけの塊(かたまり)である幼少期のこどもは、
「なんで?」「どうして?」と言うことが多いと思います。
授業でも好奇心を刺激して、やる気を引き上げる
学校の授業は、どうでしょうか?
小学校、中学校、特別支援学校では、
【導入】の「めあて」「課題」で、児童生徒の「なんで?」「どうして?」を引き出すことが重視されています。
これが、内発的動機づけを高める好奇心の刺激となります。
それも関係してか、先生から提示する「今日のめあて(課題)は〇〇です。」はNGと言われることが多いようです。
児童生徒が「なんで?」「どうして?」「知りたい!」となると
内発的動機づけが高まる
このときの「ズレ」は小さすぎると接近せず、大きすぎると回避されるため、適度な「ズレ」である必要があります。
つまり、簡単すぎず、難しすぎないことが重要です。
さらに、興味に加え、「価値」が同時に感じられると、内発的動機づけが高まると言われています。
高等学校では、
【導入】で「課題」を設定しない授業が、多いのではないかと思います。
ただ、授業の上手な先生は、
授業の中で、生徒にさまざまな「疑問」を投げかけ
生徒の「なんで?」「どうして?」「知りたい!」を引き出している
例えば
例1 事象の理由について「どうして〇〇になるのかな?」
例2 2つを比較して「何が違うのかな?」
例3 できる→できる→あれ? の流れで、既習と未習のズレを作る
このような疑問、ズレについて、生徒が1人で考えたり、話し合ったり、発表したりする
児童生徒から「なんで?」「どうして?」を引き出す、ちょっとした工夫によって、
児童生徒が主体的に取り組む授業が演出できそうです。
次回(第2回)は、「やる気と自己決定」について、やさしく解説します。
まとめ
- 内発的動機づけは、活動に対する集中と、持続的な取り組み、そしてポジティブな感情が得られている状態を生む
- 好奇心を刺激することで、内発的動機づけが高まる
好奇心は「自分が既に知っていること」と「新しいモノ・情報」の間にズレがあるときに刺激される - 授業のなかで、児童生徒が「なんで?」「どうして?」「知りたい!」と思う場面を増やすことが重要
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