【心理的安全性】職員室から始める安全・安心な学校(後編)

このようなことはありませんか?

ICTのことは他の先生に質問できるけど、
学習評価については『そんなことも知らないの』と思われそうで、質問できない。

不登校対策の取組を本格的に始めたほうが良いと思うけど、
『うまくいくの?』『意味があるの?』と言われそうで、なかなか提案できない。

「心理的安全性」が高まれば、このような対人関係上のリスクが減少し、教職員の対話と協働が実現できます

前編を読んでいない方はこちら
↓ ↓ ↓

内容が理解しやすいように、理論的背景を省略しています。
詳しく学びたい方は、最後に紹介している書籍を参照願います。

このコラムは約3分で読めます。

目次

4 仲良しの職員室は、心理的安全性がある?

答えを、先に言うと、

あります。ただ、仲良しの『質』によっては、無いかもしれません

集団のメンバーの仲が良いことを、社会心理学では集団凝集性(ぎょうしゅうせい)と言います。

メンバーを集団に留まらせる内的な力で、連帯感や仲間意識が強い状態です。

企業では、離職率の改善や生産性の向上に影響すると言われており、

一見すると、とても「心理的安全性」があって、対人関係上のリスクが無いように見えます。

しかし、集団凝集性が高いことで、「心理的安全性」が阻害される場合があります

それは、同調圧力です。

同調圧力

同調圧力(Peer pressure)とは

集団において意思決定、合意形成を行う際に、少数意見を有する者が、暗黙のうちに多数意見に合わせるように誘導されること

下図のように、全員が「YES」と言っているところで、自分だけが「NO」とは言いづらいものです。

集団凝集性が高いと、同調圧力が強くなると言われています。

背景には、「空気を悪くしたくない」「和を乱したくない」「嫌われたくない」「みんがそう言うなら正しい」「反対意見がないのが証拠」「自信がない」「責任が取れない」などの思考があります。

仲が良いと、関係を壊したくないので、素直な意見が言いづらくなるのです。

思考の多様性

必要な意見が言い合える職場になるためには、

仲が良いこととは別に、次のような「質」が重要と考えられます

  • 他の教職員とは異なる意見、空気を悪くするような発言を言っても、受け入れられる
  • すべての意見が、経験年数や実績に関係なく、仕事している人の意見として尊重される
  • 組織が、思考の多様性(ダイバーシティ)を受け入れており、異質な意見が歓迎される

同調ゼロでも、オーケー! 

多様な意見、ウェルカム! って感じですね。

このような「質」のある職員室が、「心理的安全性」があるチームです

5 健全な衝突(ヘルシー・コンフリクト)

「心理的安全性」があるチームには、健全な衝突が見られます。

健全な衝突とは

業務に対する意見が衝突し、それが人間関係や小組織間の衝突にならないもの

「心理的安全性」が無いチームで、業務に対する意見が対立すると、

人間関係の衝突(例「あの先生は、反対ばかりする」)や
小組織間の衝突(例「他の学年/分掌/教科なのに」)に発展しやすく、

それを避けて、素直な意見が言えなくなります。

「心理的安全性」があるチームでは、業務に対する真剣な意見の対立があり、

その衝突が、業務内容の向上につながるプロセスとして重視されます

より良いものを作るために、様々な意見が歓迎され、「誰が言ったか」ではなく「何を言ったか」が、全てとなります。

6 対策するには(後編)

4つの不安を減らす視点から、

(前半)では「無知」「無能」だと思われる不安について、対策をお伝えしました。

後編は、ここまでの話を実現する方法として、「ネガティブ」「邪魔をする人」だと思われる不安を減らす「具体的な声かけ」をお伝えします

(0)基礎となる日常的コミュニケーション

重要なことなので、(前編と同じく)日常的コミュニケーションの確認です

  • 挨拶する 「〇〇先生、おはようございます」
  • 雑談する 「前任校では・・・」「好きな食べ物って・・・」
  • 感謝する 「ありがとうございます」
  • 責めない 「気にしないでください」
  • 話を聴く 「そうなんですね~」

「ホウレンソウ(報連相)」より
「ザッソウ(雑相)」を重視
雑談+相談 で小さなことから情報共有

このようなコミュニケーションが基礎として必要です。

では、「具体的な声かけ」について見てみましょう。

(1)きっかけとなる声かけ

「多様な意見」「新しい提案」を引き出すために

会議の最初に

この会議のゴールは、〇〇です
(目標を明確にする)

できるだけ多面的な視点から意見を出してもらいたいので、ご協力をお願いします
(プロセスを重視する)

目標や求められている行動が分かると、不安が軽減します

会議の途中で

〇〇先生からはどう見えているか、教えてもらえますか?
(発言の機会を均等にする)

議論を深めるために反対の意見も聞いてみたいのですが、あえて言ってくださる方はいらっしゃいますか?
(ネガティブな意見を求める)

ここまでの議論について、少人数で疑問点等を話し合ってください
(小単位ごとの意見を全体に持ち込む)

教職員は、言わないだけで、考えを持っています

普段から口癖のように

児童生徒にも言っているけど
チャレンジの先は、「成功」か「学び」しかないから
(チャレンジを歓迎する)

ICTで減らせる仕事をみつけませんか?
小さなことを2つ減らせば、1つチャレンジできます
(スクラップを求める)

初任者、新任者に対して

〇〇先生の新鮮な意見が、学校には必要です
(素直な意見を求める)

新しい風を入れることは重要ですね

(2)おかえしの言葉

「多様な意見」「新しい提案」が出たあと、安全性を高めるために

(会議)全体とは異なる意見に対して

貴重な意見だと思います
ありがとうございます
(感謝する)

その視点はなかったです
確かに、そのリスクは心配です
(大切に扱う)

絶対に嫌な雰囲気にしないことが重要です

(会議)バラバラな意見が出ているとき

ここまでの内容を組み合わて、上手くいきそうな意見ってありますか?
(組み合わせの意見を求める)

さまざまな意見が出ています
皆さんが真剣に考えてくださっている証拠だと思います
(プロセスを重視する)

真剣に話し合える教職員がいることが、学校の宝です

(会議)終了後に

〇〇先生の発言で、議論が深まりました
ありがとうございました
(感謝する)

新しい提案に対して

おもしろい!
もう少し詳しく聞かせてもらえますか
(関心をもって話を聞く)

一度、やってみませんか!
(チャレンジする)

どう分担していきましょう?
(提案者に業務を抱え込ませない)

自分の業務へのネガティブな意見に対して

〇〇先生は率直に言ってくださるので、ありがたいです
(感謝する)

後編のまとめ

  • 仲良しの職員室に、思考の多様性(ダイバーシティ)を受け入れる風土が加わることで、「心理的安全性」のあるチームとなる
  • 「心理的安全性」のあるチームには、健全な衝突がある
    健全な衝突は、メンバー間で業務に対する意見が衝突し、それが人間関係や小組織間の衝突にならない
  • 「心理的安全性」をつくるためには、基礎となるコミュニケーションに加え、
    多様な意見や新しい提案を求める言葉、歓迎する言葉が有効と考えられる
  • まずは、校内の教職員で「心理的安全性」について学ぶことが、大きな一歩だと思います

関連書籍のご案内
世界最高のチーム―グーグル流「最少の人数」で「最大の成果」を生み出す方法― 朝日新聞出版 ピョートル・フェリークス・グジバ
心理的安全性のつくりかた 日本能率協会マネジメントセンター 石井遼介

最後まで読んでいただき、ありがとうございました!

この記事が気に入ったら
フォローしてね!

シェアしていただける方はこちら
  • URLをコピーしました!
目次