【スケーリング・クエスチョン】この質問が解決への扉をノックする(前編)

「1~10の間でいくつですか?」と質問するスケーリング・クエスチョン

この質問方法は知っているけど、どうやったら「解決への扉」に近づけるのか分からない。

そう思っている方のために、前編・後編の2回に分けて、効果的な使い方をご説明します。

このコラムを読むと、児童生徒に質問するスキルがレベルアップできます。

内容が理解しやすいように、理論的背景を省略しています。
詳しく学びたい方は、最後に紹介している書籍を参照願います。

このコラムは約3分で読めます。

目次

1 スケーリング・クエスチョンとは

汎用性の高い質問

1から10の間で、1が最低の状態10がそこそこ良い状態だとしたら、
今はいくつですか?

スケール=ものさし、尺度

さまざまな状態を、数値(目盛り)で表現してもらう質問です。

例えば

例1 友人関係に悩む児童生徒に、

1から10の間で、1が最悪な一日、10が理想の一日だとしたら、今日はいくつかな?

例2 こどもの状態を心配する保護者に、

お子様が元気な状態を10、全く元気がない状態を1としたら、今のお子様はいくつぐらいですか?

例3 不登校の児童生徒に、

少し変わったことを訊くけど、1から10の間で、さっき聞いた最悪な状態が1、教室でそこそこ楽しくやっている状態が10だとしたら、今はいくつぐらいだと思う?

児童生徒から「まあまあです」と曖昧な表現で答えられても、分かりにくいと思います。

数値で「4です」「5と6の間ぐらい」と答えてもらえると、イメージを共有しやすくなります

とても使いやすく、広範囲に利用できる質問方法です。

質問時の小さな工夫、アレンジ

  • 「0から100の間で」でも大丈夫です

    エネルギーは「%」、評価は「点」を付けると、分かりやすいかもしれません。
  • 質問の前に「少し変わったこと訊くけど」と入れると、相手は落ち着いて答えてくれます。
  • 基本は、良いものが10です(10に近づきたい心理があるため)。

    ただ、症状や怒りなどは、逆にして、10が大きいとした方が分かりやすいです。
  • 今はいくつ?」「今日はいくつ?」と訊くのは、今後、変わることを前提としています。

    変化は常に起きていると考えることが、解決に役立ちます。
  • 低すぎる数値だと扱いづらいので(4~6が扱いやすい)、質問するタイミングに考慮する必要があります。

    先に最悪の状態を聴いてから、それを1として今の状態を質問すると、低すぎる回答を避けられます。
  • 視覚的にスケールの線や数字を用意すると、分かりやすく、そのあとの話が進めやすくなります。

「教育相談 指さしシート 長期休業明けの面談バージョン」にスケールがあります。
↓ ↓ ↓

2 効果的な使い方(前編)

重要なのは、スケーリング・クエスチョンの後に、次の視点で話を聴くことです。

(1)あるもの探し

数値の中身(あるもの)を聴いていきます。

例えば

先生

1から10の間で、自分にとても満足している状態が10、全くダメな状態が1だとしたら、いくつだと思う?

Aさん

・・・「4」

先生

「4」の中身を聞かせてもらえる?

Aさん

教室で友だちと楽しいから。
いつも笑っていて、休み時間が一番好き

先生

友だちと楽しむ自分に満足しているのね
「4」の中身は他に何がある?

Aさん

それぐらいかな・・・

先生

1や2じゃなくて「4」だから、きっと他にもあるんじゃない?

Aさん

・・・困っている人がいたら助けるし

先生

困っている人を助けるのね!すごーい!

Aさん

最近は、宿題を出せるときがあるから・・・ちょっとだけど

先生

嬉しいわ!
どうやって宿題ができるようになったの?

先生の質問によって、Aさんは「自分にあるもの」「できていること」を言葉にしています

(先生がしつこく聴くのは、必ず何かを持っていると信じているから、できることです。ぜひ、マネしてください。)

逆の「ないもの探し」をしないように、ご注意ください。

児童生徒の回答「4」を聞いて、
「(10までの)残り6は、何が足りない?」
「どうすれば、もっと上がると思う?」
と訊かないようにしましょう。

先生が「あなたに足りないもの」「できていないこと」を明確にしようとすると、
児童生徒は、責められているように感じ、会話がお説教モードになります。

「解決への扉」でなく、「反省への扉」に早変わりです。

お説教モードが必要なときはありますが、スケーリング・クエスチョンには向いていません。

数値を訊かれるたびに、ビクビクしちゃいそうです。

(2)あるものを活用する

「あるもの探し」ができたら、「あるもの」を使ったり、「できていること」を拡大したりすることを提案します

例えば

先生

Aさんはたくさんの良いものを持っているのね。
大切な友だち、人を助ける優しい心、宿題に取り組んだ成長力

Aさん

たくさんあってビックリ

先生

この良いものを伸ばしたら、「4」から数が上がりそうね

Aさん

そうかも

先生

Aさんが今持っているものを、大きくしたり、何かに役立てたりできるかしら? どうしたら良いと思う?

Aさん

・・・もっと友だちと仲良くする?

先生

いいわねー!
人助けはどうする?

Aさん

・・・困っている人がいないか探す

先生

それもいいわね!もし、発見したら私にも教えてね。
宿題はどうする?

Aさん

・・・提出する日を増やす

Aさんからアイディアが出てこないときは、先生から提案します。

すでにAさんの中に「あるもの」「できていること」なので、Aさんは嫌な気持ちがしないと思います

Aさんは自分自身をより良くする方法を考え、解決に向けた会話ができています

「あるもの探し」と「あるものを活用する」の会話をしたら、
解決に向けた会話になっている

ここまで読んで、「何の問題が解決したの?」と思われたかもしれません。

例えば、問題が
・Aさんは、友だちが嫌がることを言う
・Aさんは、級友から怖がられている
・Aさんは、授業中の私語が止まらない、立ち歩くこともある
だったら、

先ほどのAさんは、
問題について、先生と話し合っていないのに、問題の減少に向っています。

問題について話し合うことは、教育現場でよく行われていることですが、
「問題を無くすことは難しい」と感じている先生が多いと思います。

Aさんと先生の会話のように、
解決 = (Aさん自身にとって)状態が少し良くなること

と考えると、
解決は実現しやすいものとなり、
その解決が増えるほど、結果的に
「(周りの人にとっての)問題が無くなっていきます」。

前編のまとめ

  • スケーリング・クエスチョンを効果的に使うためには、数値を聞いた後の聴き方が重要
  • あるもの探し」と「あるものを活用する」の会話をしたら、解決に向けた会話になっている
  • では、もっと数値(スケール)を上げるためにはどうしたらよいか・・・それは「後編」に続きます

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<森・黒沢のワークショップで学ぶ>解決志向ブリーフセラピー ほんの森出版 森 俊夫、黒沢幸子
解決志向で子どもとかかわる―子どもが課題をのり越え、力を発揮するために― 金剛出版 ジュディス・ミルナー、ジャッキー・ベイトマン

最後まで読んでいただき、ありがとうございました!

※「解決への扉」は児童生徒の中にあり、開けられるのは本人だけ。だから、ノックするだけです。

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