「1~10の間でいくつですか?」と質問するスケーリング・クエスチョン
この質問方法は知っているけど、どうやったら「解決への扉」に近づけるのか分からない。
そう思っている方のために、前編と後編の2回に分けて、効果的な使い方をご説明します。
このコラムを読むと、児童生徒に質問するスキルがレベルアップできます。
前編を読んでいない方はこちら
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内容が理解しやすいように、理論的背景を省略しています。
詳しく学びたい方は、最後に紹介している書籍を参照願います。
このコラムは約3分で読めます。
3 効果的な使い方(後編)
(前編)の「あるもの探し」「あるものを活用する」に続きます。
重要なのは、スケーリング・クエスチョンの後に、次の視点で話を聴くことです。
(3)数値の差異を聴く
数値が違ったら何が違うのか、聴いていきます。
例えば
1から10の間で、最悪な状態が1、教室でそこそこ楽しくやっている状態が10だとしたら、今はいくつ?
・・・「3」ぐらい
「3」はどんな状態なの?
(教室へ)絶対に行けない状態・・・
そうなのね。
ただ、1じゃなくて「3」なのは、何があるから?
学校には来れているから
よく来れているね。
不安だったんじゃない?
最初は・・・でも、だんだんこの部屋にも慣れたし
最初は不安だったのね。不安に立ち向かって・・・、凄いね。
慣れてくれたのも嬉しいよ。
Bさんには、少しずつでも変化していく力があると思うの
そんなふうに言ってくれるのは、先生だけです
あくまでイメージだけど、「3」から「3.5」なったら、
「3.5」はどんな感じになっているの?
・・・えっと
遠くから教室を見ることができているかも
先生が0.5上がった状態を質問し、Bさんは「遠くから教室を見ることできている」と答えています。
これは、Bさんにとって 少し解決できた姿のイメージ です。
数値の差異を聴くことで、少し解決できた姿のイメージをもつことができる
次の2つの質問を比べてください。
①「数値を上げるために、何ができそう?」
②「0.5上がった状態って、どんな感じかな?」
①に対して児童生徒は、
「言ったら、やらされそう」
「がんばらせようとしている」 という圧力を感じそうです。
これが「ないもの探し」です。
②は、状態を訊いているので、少し客観性があり、印象がマイルドです。
視覚的にスケールの線や数字を用意すると、さらに客観性が高まると思います。
これが「数値の差異を聴く」です。
(圧力がゼロなわけではないので、訊き方にご注意ください)
(4)「良い目標の3条件」を満たす
Bさんが話してくれた0.5上がったイメージは、Bさんにとって次の目標になります。
この目標は「良い目標の3条件」を満たすと良いと言われています。
良い目標の3条件
①小さなもの
②具体的なもの
③肯定形(〜する)で語られるもの
もし、Bさんから出たイメージが「良い目標の3条件」を満たさないときは、次のように質問すると効果的です。
例1:具体的でなかった場合
「3」から「3.5」なったら、
「3.5」はどんな感じになっているの?
怖さが減っているかも
(抽象的なもの)
怖さが減っているのね。
私がそんなBさんを見て、「3.5になった」と気づけるのは、Bさんのどんな姿かな?
(映像を考えてもらう)
例2:肯定形でなかった場合
「3」から「3.5」なったら、
「3.5」はどんな感じになっているの?
廊下で、人の声を聞いても隠れない
(否定形で語られたもの)
それは大きな違いだね。
隠れない代わりに、Bさんは何をしているの?
(〜しない代わりに何をするか、考えてもらう)
(前編に引き続き)あるものを活用する
先のBさんとの会話でも「あるもの探し」ができているので、
「あるものを活用する」の会話ができます。
例えば
Bさんは、とりあえず、いくつになったらいいと思う?
・・・「3.5」
「3.5」は、遠くから教室を見るだったね
「3.5」を達成するために、Bさんの持っている力や環境が、どんなふうに役に立ちそう?
先生に一緒にいてもらいたいです
私を活用してくれるのね。ありがとう
Bさんの持っている力はどう役立ちそうかな?
前みたいに、慣れていけば、できるかも
慣れると不安を減らすことができるんだよね
Bさんのペースで慣れていこうね
4 予想外の回答に対して
スケールの回答が「1」だったら
児童生徒が「最悪の状態」だと言ったのですから、明確なSOSのサインです。
どれだけ最悪なのか話を聴くことに集中し、
その後の組織的な支援(他の教職員・スクールカウンセラー、保護者等)の活用を提案します。
また、タイミングをみて、次のように質問することもできます。
そのような最悪の状態で、どんなふうにして自分を支えているの?
(あるもの探し)
1上がった「2」の状態って、どんな感じなの?
(数値の差異を聴く)
スケールの回答が「10」だったら
「本当に10なの?」「ちゃんと考えて!」と(思っても)言わず、「あるもの探し」に集中します。
凄いね!一番良い状態なんだね。
「10」であるために、何かがんばっていることがあるんじゃない?
(あるもの探し)
それだけ、がんばっているあなたなら、1から11のスケールにレベルアップできそうね。
ちなみに、0.1上がった「10.1」の状態って、どんな感じ?
(数値の差異を聴く)
児童生徒が「ないもの」しか話さないとき
「あるもの探し」したくても、児童生徒が「ないもの」しか話さない。
そのようなときは、児童生徒が話したいこと(ないもの)を聴くことに、集中した方が良いと思います。
おそらく、その児童生徒は、どれだけ大変で苦しいか、分かってほしいのだろうと思います。
また、タイミングをみて、次のように質問することもできます。
大変な思いをしているのね。
そんな大変な状況の中で、よく今日まで投げ出さずにやってきたね。どうやって、やりくりしてきたの?
(あるもの探し)
後編のまとめ
- 数値の差異を聴くことで、少し解決できた姿のイメージをもつことができる。
そのイメージは、目標になる。 - 「良い目標の3条件」は
①小さなもの ②具体的なもの ③肯定形(〜する)で語られるもの - 目標の達成に向け「あるものを活用する」の会話をすることで、達成に必要な支援ができる。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!